第37回 軽井沢で楽しむオールショパンプログラム

ご報告が遅れましたが晴天の7月31日、「第37回 軽井沢で楽しむオールショパンプログラム」が開催されました。<横山幸雄さんとN響メンバーが奏でるオーケストラ作品>と題して、天才ピアニスト・横山幸雄さんとNHK交響楽団次席ヴィオラ奏者の飛澤浩人さん率いるN響カルテットの皆さんとの共演でした。昨年のピアニスト仲道祐子さんの演奏会と同様、飛澤さんのほかにヴァイオリンの宇根京子さんと横溝耕一さん、そしてチェロ首席奏者の向山佳絵子さんの3人が加わり、軽井沢ショパン倶楽部の松木康夫会長が冒頭挨拶で語ったように、「愛宕の森で開かれる日本一贅沢なサロンコンサート」となりました。

           

曲目は
序奏と華麗なるポロネーズ(ピアノ&チェロ)
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ(ピアノ&弦楽四重奏)
バラード第1番(ピアノソロ)
スケッルツォ第2番(ピアノソロ)
  奏者を交えたティータイム
ノクターン第7番(ピアノソロ)
ノクターン第8番(ピアノソロ)
コンチェルト第2番(ピアノ&弦楽四重奏)
ノクターン第20番「遺作」(ピアノソロ アンコールに応えて)
でした。

第一部はチェロの向山佳絵子さんと横山幸雄さんの演奏する「序奏と華麗なるポロネーズ」で幕を開けました。適度なイントネーションやルバートを効果的に利かせ、互いの聴かせどころを存分に引き出していました。なめらかでメリハリのある曲運びが印象的で初共演とは思えないほどでした。 ちなみにお二人は高校時代の先輩・後輩にあたるそうです。
二曲目の「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」の演奏からヴァイオリンの宇根京子さん、横溝耕一さん、そしてヴィオラの飛澤浩人さんが加わりました。横山さんがソロでも頻繁に演奏する曲ですが、前半のアンダンテスピアナートのピアノソロでは繊細さがさらに磨かれました。ヴァイオリンとヴィオラによるファンファーレが鳴り響き、チェロの低音が加わってポロネーズへと移行しましたが、冒頭からN響特有の柔軟な色彩感を発揮してピアノを盛り立てました。横山さんのピアノも豊穣感と決定力にあふれ、前作同様に完成度の高い演奏となりました。
第一部の後半は横山さんのピアノソロでした。「バラード1番」も「スケルツォ2番」も確かなテクニックと説得力に満ちた演奏となりました。曲の聴かせどころを押さえながらコーダに向かって聴き手を魅了していく勢いはいつもながら圧巻で、会場全体が興奮の渦に巻き込まれました。 
 
30分ほどのティータイムを挟んで後半の第二部が始まり、先ずは横山さんのピアノソロで「ノクターン7番」と「同8番」が演奏されました。特にピカルディ終止が印象的な7番の抒情性と、宝石を散りばめたような8番の優雅さは、まさにサロンコンサートらしさを象徴するようでした。
続いてN響の皆さんが再び加わって「コンチェルト2番」が演奏されました。第一部の「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」では比較的出番の少なかった弦楽器も、このコンチェルトではデュトワ以降のN響の特徴と言われる柔軟な色彩感を如何なく発揮して、横山さんのピアノをいっそう引き立てました。
第一楽章では比較的長目の弦の序奏から始まり、冒頭から若きショパンの恋の苦悩が印象付けられました。それを引き継いだピアノも気迫あふれる演奏で全体を牽引し、ショパンの人生のように目まぐるしく揺れ動く一大抒情詩となりました。
聴かせどころの第二楽章では甘く切ないピアノの旋律に、弦楽器が柔和な表情を添えました。ユニゾンで劇的に語られた中間部では、弦のトレモロがショパンの焦燥感を引き立てました。随所で完璧なテクニックを駆使したピアノは、繊細な音色とメリハリある演奏でショパンの恋人コンスタンツィアへの気持ちを最大限に表現しました。
マズルカのオべレク的要素の入り混じった第三楽章では、変化とスピード感あふれる演奏が披露されました。ピアノの装飾的なパッセージやヴィオラで表現したホルンの音色も印象的でしたが、曲が進むにつれてショパンの苦悩が祖国ポーランドの民族的リズムに昇華し、癒されてゆく安堵感さえ感じました。

今回の横山幸雄さんとN響カルテットの皆さんとの共演は、サロンコンサートの良さををあらためて見直すにふさわしい素晴らしい内容となりました。ショパンは親しい仲間の集まるサロンで演奏することを好み、規模の大きな会場での演奏は少なかったと言われています。コンチェルトも今回のような小編成でサロンで演奏される機会が多かったようです。
ただ多くの傑作を残したショパンでしたが、ジョルジュ・サンドとの破局などもあって39才で早逝してしまい、パリに行ってからは恵まれた後半生ではありませんでした。そんなショパンだったからこそ、聴き手と距離の近いサロンで育まれる音楽的つながりを大切に思ったのかもしれません。ノクターン20番「遺作」は姉ルドヴィカのコンチェルト2番の練習用にと、ポーランドを旅立つ少し前に書かれたそうです。今回
横山さんがアンコールで弾いた身に迫る哀愁が、若きショパンのその後を暗示するようでもありました。

           


お忙しい中お越しくださった多くのお客様、軽井沢ショパン倶楽部会長と世話人の皆様、そして素晴らしい演奏を披露してくださった全奏者の皆様に心から感謝申し上げます。


【2016/10/18 01:18】 コンサート報告 | TRACKBACK(-) | COMMENT(-)
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